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「な!ちょっ……何すんですか!」 拓海は一口分残っていた缶コーヒーから思わず手を離してしまった。 それは重力にしたがってアスファルトに落ち、琥珀色のしみが広がっていく。 啓介の手首を掴んで、そこから剥がそうとした。 身を捩って逃げようとした。 けれど啓介のもう片方の手が、拓海の肩をハチロクに押し付けて、それを許さなかった。 シャツ越しに背中から伝わる金属の冷たさと硬い感触。 その感触に、自分の身体の熱さを知る。 「う……」 逃げられないほどの力で押さえつけられた訳ではない。 熱のせいで思うように身体が動かなかった。 もしかしたら、――拓海は頭の片隅でその熱の開放を望んでいたのかもしれない。 「ホラ、かなりキテるじゃん……」 はは、と啓介は軽く笑った。 それは拓海を蔑んでいるようにも聞こえたし、同意を求めているようにも聞こえた。 そもそも、そこに触れ、その状態を確かめるという行為は――少なからず啓介も、それを期待していたように思えてならない。 頬に息がかかるほど近くから、茶色い少しつり上がった瞳が挑発的に睨んでいる。 啓介の指が、ジーンズの硬い生地越しに拓海自身を撫で上げる。 撫で上げられた拓海のペニスは、啓介の言葉通り、すでにかなりヤバイ状態で、ジーンズの硬い生地に擦れて痛みを伴うほどだった。 熱くなればなるほど、持て余した熱は開放してほしいと拓海の自身を使って訴えている。 いつもは、自宅に帰ってから自慰という方法でこっそりとその熱を開放していた。 それしか方法を知らなかったし、そうでもしなければ熱くて熱くて眠る事も出来なかった。 しかし、今夜はいつもより少し――熱くなりすぎた。 啓介のドライバーとしての腕を拓海は信用していた。 かなり限界に近い領域でも、FDは怪しい挙動を見せることはないし、多少、マシンが予想外の反応を示してもとっちらかるという事もなかった。啓介と走ることはこの上なく楽しい。信用できるから拓海もだんだんアクセルを踏む足に力が入ってしまう。 走りがシンクロする。 同時に、身体が熱を持つ。 啓介は片手で器用に拓海のベルトをはずした。 カチャカチャという金属音に続いて、ジジ……とファスナーの下がる音がする。 「おねが……止めて、ください……!」 途切れ途切れに拒絶の言葉を吐いてみても、啓介は一向に止める気配はなかった。 一生懸命、力の入らない手でその手を止めようとしたけれど、気が付けばトランクスまでずり下げられて、拓海の下半身は剥き出しにされていた。 先走りの透明な雫を垂らして、自分自身が腹に付きそうなほど緩く曲線を描いて反り返っているのが見える。 剥き出しにされた部分を、峠を吹き抜ける風が木の葉を揺らすのと同じように撫でて行く。 恥ずかしいような、待ち焦がれていたような。 理性と本能が拓海の中でせめぎあっているようだった。 「……あ」 啓介の長い指が、情欲をかき立てるように根元から先端に向かって撫で上げる。 拓海のペニスは、意志とは無関係に愛撫に反応し、ビクンと脈打った。 そのまま数回上下に扱かれただけで、先走りがまたプクリと溢れ、啓介の手を濡らし、くちゅくちゅと濡れた音が立ち始めた。 「ずいぶん……熱そうだな」 そう言うと啓介はいきなりしゃがんで、拓海のペニスをパクリと口に含んだ。 ぬるりとした生暖かい感触に包まれ、腰を引いて逃げようにも背後にはハチロクがあって逃げ場がない。 別の生き物のように蠢く舌に翻弄され、意識が浮遊する。 足元の感覚もおぼつかず、夢か現かも区別がつかない。 「……んんんっ!」 いきなり与えられた快楽。 唇を噛み締めていたので、くぐもった声が出てしまった。 自分の股間で、何が起こってるのか理解するまでに時間がかかった。下を見ると、ツンツンとした金髪に近い茶色い髪が、拓海の下腹部で動いている。唾液をたっぷり絡めた長い舌を出して、べろりと舐め上げる。赤い舌を硬く尖らせて、先端をつつく様に刺激する。かと思うと、音を立てて先端に吸い付いて根元の部分を手で扱いている。 「やだ!いや……やめて……ください……ッ」 啓介が顔を上げると、その口元からポロリと濡れた自分自身が吐き出されてきた。 たっぷりと唾液で塗らされ、ぬらぬらと光っている。 拓海は――その光景に、何故か余計に興奮した。 「コッチは全然嫌がってねぇけど……?」 猫のような目で、上目遣いで拓海を見上げると、見透かすように唇の両端を吊り上げる。 頭では拒絶していても、身体は素直に反応してしまう。同じ男だから分かる的確な愛撫に、拓海のペニスは悦び、タラタラと先走りを垂らして、もう張り裂けんばかりに怒張していた。 もう拓海は膝に力が入らなくて、ハチロクに凭れて立っているのがやっとの状態だった。 ともすれば、膝の力ががくりと抜けて、その場に倒れこんでしまいそうだ。 啓介はためらいもせずに、再び拓海のペニスを口に含むと、唾液を口内にたっぷりと溜めて、柔らかな舌で扱き始めた。ぐちゅぐちゅと湿った音が拓海達と車しかない駐車場に響く。 「ひッ……ぁ……っあ!」 拓海の理性は完全にどこかへ吹っ飛んでしまい、与えられる快楽に素直に溺れた。 唇で、先端をちゅるちゅるっと音を立てて吸いつかれ、湿った舌に、くびれを擦り上げられる。 啓介の大きな手に、適度に圧力を加えて扱き上げられる。 それは、慣れた手つきで、否応なしに昂ぶらされていく。 腰の奥に芽生えた熱は、あっという間に大きく膨らみ、狭い出口目指してせり上がり始めていた。 吐く息が熱い。 体内の熱の一端が、肺からもはみだしている様だった。 そのうち――一気に絶頂に達する快楽の波が訪れた。 「も……だめ!出る……っ!!」 何とか声を絞り出して訴えたけれど、一向に啓介の舌と手が止まる様子はなくて。 押し寄せる一方の波に、身を任せるしかなくなる。 逆らうすべなど――その時の拓海は持ち合わせていなかった。 「くっ……!」 結局拓海は堪え切れずに、腰をビクビクと震わせて、啓介の口の中に放ってしまった。 他人の手で絶頂へと導かれ、さらに、暖かくてうごめく場所へ射精することは、どこか女性とするセックスと似ていた。自分の手やティッシュの中に射精する自慰よりも、何倍も気持ちが良くて、そして自慰独特の夢が覚めれば一人きりというむなしさもない。 けれど、相手は歳だけで言えば先輩にも当たる啓介だ。 やっていいことと悪いことがある。 「す、すみません……」 途端に申し訳ない気持ちになり、啓介の顔を覗き込むと、ごくりと喉を鳴らして味わうように拓海の放った物を全部飲み込んだ後だった。 啓介が萎えつつある拓海のペニスから口を離すと同時に、拓海はずるずるとその場にへたり込んでしまった。 もう膝に力が入らなくて、立っている事すら出来ない。 「本当に……その……すいません……」 力の入らない手で、トランクスとジーンズを何とかずり上げ、熱を放ったペニスを下着の中に押し込んだ。 は、は、と肩を揺らして息をする。 そして、何度か深呼吸すると――いつしか、呼吸は穏やかになり、身体の内側に篭もるような熱さは感じられなくなっていた。 |