脈 -4-


「藤原、どんな異物が入れられているか解らないからおとなしくしていろ。大丈夫だから。もうすぐ取り出せる
気持ち悪いかもしれないが、身体の力を抜いて……息を吐くようにすれば、楽になれる」
極めて医学的に言ったつもりだった。
しかし拓海が頑なに首を振り「涼介さん……お願いだから、紐を……」としきりに返すから、
思わず意地になってもがく肩を押さえつけ、コードに手をかけた。
「藤原……おとなしくしろって言っただろ。力を抜け……思わぬ怪我をするかもしれないから……」
「やっ……紐、紐を解いてください……お願いです」
ずずっ……と体内で動く手ごたえとともに、拓海の身体が硬直し増す抵抗。
イヤイヤと首を振り、切ない声で抗議する。
「や……だ……やめ、て……」
言葉の合間に漏れる途切れ途切れな呼吸。
硬直する身体。
「お願い……だから……」と懇願する必死な声。
涼介はその言葉を、この状況におかれた拓海の羞恥のせいだと聞く耳持たず、指先ではコードを手繰りでクイクイと内部を探る。
そして徐々に引く抜く手に力を入れた。
引くほどに、ブーンという振動が涼介の手に届く。
コレがどれだけの刺激を腸壁から拓海に与えているのか……それも、今どこの位置で、震えているのか……
医学を学んでいる涼介が知悉ちしつしていないわけがなかった。
「やっ、お願い……もっ……っ」
小さな懇願の叫びとともに「……んっ」という未だ拓海の唇から一度も聞いた事のない艶めかしい声がこぼれ
身体が仰け反る。
いつも見る歳の割りに幼くみえる顔、今は汗が噴出して、黒くて大きな瞳が潤んでいた。
こんなにぽってりしていたのか?と初めて意識させた拓海の唇からは
「あっ……あっ……やぁっ」と上ずった声が漏れ、キツク拘束されて動かない肩を小刻みに震わせた。
身体を軋ませて悶える拓海から、涼介は眼が離せなくなった。
涼介の指先はコードに集中し、視覚は拓海の表情を捉える。
キュン、とコードを引けば唇を噛み、鼻から甘い息を吐く。
ぬるんとローターが腸壁に擦れるほどに力を加えれば、まぶたをギュウと閉じて、マツゲを震わせる。
5〜6回ほどクイクイと引き抜くようで思わせぶりに留まらせれば「やぁ……」と耐え切れぬ嬌声が赤く染まった唇から漏れた。
それと同時に、腸壁がぎゅうと収縮したような手ごたえを、ローターと繋がるコードから感じた。

そのすぼまるような衝撃のあと、拓海のペニスは、白い精液をベッドの上に、ぴゅぴゅぴゅ……と幾度も飛ばしていた。
拘束された身体をきつそうに震わせて、白い身体をほんのり桃色に染めていた。
その淡い色の中でたった一箇所、濃い色で染まっているグロテスクなペニスだけが勝手に上下に震え、猛り立つ動物のようだった。 そして、硬直したていた身体は、しばらくして、いきなり力が抜けてストンと崩れ落ち、 拓海は眼を閉じたまま、甘い溜息を深く深く吐いた。
苦しげに呼吸する唇は隠微で、涼介の眼をソコに拘束させるほどだった。
よく知った藤原拓海という、紛れもない男と言うことは百も承知なのに、体内に異物をうずめられ悶え、
精を吐く身体は、信じられないほど艶めかしく映った。
普段の拓海からは想像もつかない痴態だった。
その姿に涼介が一瞬息を呑んだ後、
――なんて顔するんだろうな……と、自分の中で何か猛烈な勢いでうねり始めているのを自覚した。


拘束された身体に一方的に性的悪戯をする下劣な行為してしまった自分を認めたくない。
これは助け出す、という名目だった。
こうなることもある、仕方ないだろ……と涼介は誰にでもなく、自分に言い訳をする。

――いや違う。

先ほど涼介が拓海にした行為は、身体の拘束を解かず、体内の異物をうずめたまま、思わせぶりに弄ぶ行為だった。
手探りであったけれど、ローターがとどまっている部分に前立腺があると辺りをつけて、
コードを引くフリをして故意に振動を与えていた。
見たこともない潤んだ眼で、未だ聞いたこともないような低くセクシーな声で、身体の自由を奪われて悶える拓海が
絶頂を迎えたとき……

……藤原がどうなるのかを見たかった。

――コレが本音だ。

拓海は、身体に壮絶な刺激を与えられて、はぁはぁ……と背中で呼吸している。
拘束されたまま快楽に溺れた拓海を見下ろし、涼介は自分の呼吸も昂ぶっているのを理解した。
長い艶やかなまつげに囲まれて、しっとり濡れた眼、黒々とした瞳は恥辱と屈辱に満ちている。

――あの男は、こんな藤原を見ても、ただ悪戯に小さな淫具を挿入するだけで満足したと言うのか?

涼介は自分の予想外の発想に、自分自身に怖気おぞけを震わせた。

――もし、あの男がオレだったら……
――藤原を犯すところまでしていた……と、言うのか?

「涼介さん……」
名を呼ばれて我に返った。
「抜いて……下さい」
吐息交じりで乞われて、涼介は「ああ……」と返した。
射精したばかりで力が入らないのか、締め付けない直腸。
そこに留まっていたローターは、少し力を加えれば、ぬるん……と、小さな口から、あっけないほど簡単に排出された。
真っ赤な物体は、ぶぶぶぶ……と空気を震わせ、自身を小刻みに震わせてベッドの上を僅かに移動する。
コレが藤原の中で、何らかの刺激を与えていたのか……
こんな僅かな物体、かすかな振動で……藤原はあんなに官能的な顔を見せた
もし、もっと強烈な刺激を与えたら、藤原はどんな反応を示すんだろうな……
思わず沸いてしまったその不謹慎な感情に驚いて、追い出すように頭を振った。
そして、体内から抜き出してもまだコードの先で震え続ける真っ赤なローターを、力任せに引きちぎって、床に投げ捨てた。
沈黙を取り戻した淫猥なおもちゃは、絨毯の上で二回バウンドして、窓際の壁に当たってコツンと音を立てた。
涼介がその音に視線を落とすと、床に落ちている靴下のようなものに眼が留まった。
それは粉を吹いたようなクリーム色のゴム……に見えた。
一瞬、コンドームかと思い、まさかセックスもしたのか?と戦慄する。
体内にペニスを埋め込まれた拓海を……淫らに悶える姿を想像してしまった。
しかし、よく見ればその物体はシリコン手袋だった。
使用後の、裏返った状態だ。
男は言っていたはずだ。
異常性癖者ではないし、変態でもない、と。
きっと汚いものを触るような扱いを、拓海にしたのだろう。

「……涼介さん……こっち見ないで下さい。お願いします。早く……早くこの腕の紐を解いてください」
涼介に背を向けたまま、むき出しになった尻を向けた拓海が振り返りもせず、言った。
俯く顔。
上下する肩。
下半身の前の布には、吐き出した精子が浸み込むこともなく溜まり、
弛緩したペニスとタラリと糸を引くようにして、未だトロトロと白濁とした体液を流していた。
白い腿の上にも筋をなして垂れている。
「藤原……」
覗き込もうとする涼介に、震える肩越しに顔を隠し、喉の奥から絞り出すような声で拓海は叫んだ。
「見ないで下さい……こんなっ……」
「いや、仕方ないことだ。あんなのものを長時間も入れられていたんじゃ……」
「でも……それ、女が使うものでしょ?こんなの身体ん中に入れられて、こんなになる男、最低……です
オレ、自分が……情けなくて、恥ずかしいです……」
「いや、違う。ソレを直腸のあの場所で作動されたら男なら誰でもそうなる
男だからこそ、仕方がない現象なんだと、オレは言いたかったんだ
ローターが留まっていた場所は前立腺と言って、あの場所に直接的に刺激を与えられたら、男はひとたまりもないんだぜ」
拓海が恥ずかしがるのを100も承知で、故意にあの場所にローターを留まらせたとは拓海も思ってはいない。
前立腺などという部位すら知らなさそうだ。
「……涼介さんは、やっぱ医者になる人だから冷静ですね。でも、オレは……涼介さんの前で……」
はしたない事をしてしまった……恥ずかしい……と言わんばかりにベッドに顔をうずめ黙ってしまった。
背中で縛られた腕を解いて欲しいからかもしれないが、むき出しになった二つの肉が向けられた。
拓海を押し倒すように前かがみになっていた涼介の背中にゾクリと何かが走り、ドクンと体液が降りてきた。
ペニスにそれが集中するのを感じ、涼介は自分の身体に起きる異変に息を呑んだ。
弱々しく崩れる拓海に、なぜこれほど欲情するのだろう。
そっと、眼の前の白い尻に手を触れた。
つつつ……と裏筋から、アナルに向けて指を這わす。
びくっと力が入るが、拓海は何も声を発せない。
涼介は極めて冷静な声で言った。
「何か塗られたみたいだな?ローター以外、他に何か入れられたりはしなかったか?
どうせだからここで医者にかかったと思って、オレに診察されておけ。藤原の事だから、この後、医者に行ったりしないだろ?」
そう言ってうつ伏せになっている拓海をいいことに、腰を抱えるように持ち上げ、尻の肉の間に指先を差し込んで、局部に辿り着かせる。
すう、と隙間のラインに指を差し込んで奥をなぞると、拓海の尻に力が入るので、指が自由に動かなくなる。
「何も、もう……何も入ってないはずです。大丈夫ですから……」
その言葉を無視し、もう一方の掌で肉を左右に分け広げて「力を抜いた方が早く終わるぜ」と言いながら顔を近づけた。
「やめて下さい……本当に、大丈夫ですから」
「そんなの解らないだろ?」
そう言って、指でぬめるソコをしつこいほどほじくり、その接触を眼で観察する。
「……これは、オイルか?身体に害を与えるようなものだったら心配だな」
「涼介さん。もう、そんなことしないで下さい!ソレ、多分バターかなんかです
あの男、ポケットからファミレスのパンについてくるバターみたいな容器を出して、
身動き取れなくなったオレに塗ってきたから……そのパック、ゴミ箱かどこかにあるはずです」
こんなことを平気でするような男がゴミをゴミ箱に律儀に入れるタイプでもない、と思った涼介は
絨毯の上、チラと眼を落とせば、やはりバターのパッケージがベッドの脇に適当に投げ捨てられているのを見つけた。
しかし「見当たらないな。バターだったらいいが、妙なものだったらヤバイだろ
ソレと一緒に何かまだ体内に入れられてるかもしれない。中を診察するのは仕方ないと思ってくれ……」
そう言って、割った肉の隙間の奥へ十分そのオイルでぬめらせた指を差し込んだ。
「ここに指も入れられたりしたか?爪は意外と凶器になる。腸壁を傷をつけられて雑菌に感染することもあるんだ」
恥ずかしさのあまり、顔をベッドに突っ伏したまま、拓海はフルフルと首を振る。
髪と布が擦れる音が、無音になった部屋に幽かに響いた。
「アイツ、ゴムの手袋みたいの、してたから……」
バターのようなものを塗りたくったローターをいきなり陰部に入れられたようだ。
そして、手袋をした指で少しずつ奥へ飲み込ませて、スイッチを入れた、と。
「だから、あの変な機械以外、何も入れられてないから……もう……や、めっ……」
途切れ途切れの悲鳴に近い声だった。
「それなら、このオイルが人体に害はないか、確かめるぜ」
涼介は、さっきまでローターを含んでいたソコを、己のすぐ正面に移した。
両手で白い肉を広げて、その奥の色づいた部分に、そっと舌を差し込んでみた。

声にならない悲鳴が上がった。
「そんな止めてください!そこ……汚い。それに、もし人体に悪いものだったら、どうするんですか!」
身動き取れないながらも、慌てて振り返って抗議しようとする拓海。
しかし、うつ伏せで、背中に腕が束ねられていればどうにもならず、必死な声だけが発せられた。
「腸壁の粘膜は、口内や胃より吸収が早いんだ
もし人体に悪いものだったらオマエの体内にはもうかなり吸収されていると思う
だから今更オレが少しぐらい口から摂取しても大丈夫だから心配するな。それに、害のあるモノだったら一蓮托生だ」
すくい上げた涼介の舌には、間違いなくバターの塩味がした。
十中八九バターだろう。
しかし、ねっとりと舌でソコを舐めては、そのオイルが何なのか、判断がつかないような素振りで涼介は首をかしげるフリをする。
「っ……やめて……もう……お願い、です」
しきりに涼介の舌が往復した。
「やっ……や……」
拓海は衝撃で言葉を発せない。
「バターかもしれないが……違うような気もする。随分流れ出ちまった感じだな。ちょっとこれだけじゃ判断つかないから
中のオイルも確認するぜ。藤原、もうちょっと力を抜け」
そう言って、指先を1本挿入し、長時間ローターを受け入れていたせいか、案外解されていることを確認すると、
2本目の指も挿入し、入り口を2つの指で開き、その隙間に舌を差し込む。
「っ……」
くちゅっという音をたて、指先で中を弄れば、拓海の背が仰け反るのを尻の肉の上に顔をうずめていた涼介も察知した。
一度潤されたアナルに、指の挿入と、中を弄るのは簡単だった。
おまけに一度射精して弛緩している。
なのに、神経は涼介の舌と指が触れている部分に集中しているのは予想できた。
腕を縛られ、身体の自由を奪われた拓海に、恥ずかしいカッコをさせ、思うままに翻弄するのは、
この上なく涼介を欲情させ、熱中させる。
熱に浮かされたように、ソコを弄った。
弄れば弄るほど、拓海の呼吸が激しくなるのも、涼介をエスカレートさせるものになった。
しかし、理性はどこか残っている。
まだ引き返すことができる……。
まだ医療行為だったと、皮一枚で言い逃れができるだろう……。
禁断に足を踏み入れるか、ここで留まるか。
そんな、まだどこか懊悩する心を引きずりながらも、
前立腺辺りに集中し快楽を与えることを止まぬ指先は、医者になるべく技術と言ったところだろうか?
涼介は自分に言い訳がましく、そう言い聞かせていた。

「涼介、さん……これ、治療とか、診察……なんですか?」
苦しげな拓海の声がする。
いや、藤原のイく顔がもう1回見たかったからだ……と言ったら驚くだろうか?
男ならもっとも恥らうべき局部を舌や指で弄る涼介に「やめて……汚いです。もう……」と訴えるため振り返る拓海。
涙ぐみ重たく湿る長いマツゲ、吐息混じる声、紅潮してくる身体、真っ赤に充血する唇
しかし言葉とは裏腹に、両足の間にあるペニスが、既に上を向いていることが見て取れた。
涼介は「汚くなんかないぜ。診察だから気にするな」と返し、一向にやめようとしない。
愛撫に似た検診によって、拓海は欲の開放を訴え始める。
信じられない行為なのに、欲情してしまうペニスをもてあまし、拓海は腰をモゾモゾと動かし始めた。
何か違うものを求めるような、強請る色が拓海の大きな潤んだ眼に浮かんだ。
「もぅ……ん……あ、の……オレ……」
後ろ手に縛られた拓海が、何かを訴えるようにして、身をよじって涼介を見上げた。
「どうした?イキたくなったのか?」
今まで聞いた事がないような、低く誘うような涼介の声だった。
拓海はどう返答していいか困り、躊躇うように息を呑む。
「大丈夫だ。イきたくなる部分を診察しているからな。イきたくなって当然だ……
逆にイけないほうが心配だぜ。藤原……本当はもう、出したいんだろ?」
射精したくなるのが当然だと言われれば、恥ずかしげに、コクリと頷く拓海。
切なげに我慢する瞳には、どこか許しを請うようなニュアンスが浮かんでいる。
涼介は耳に近づき、熱い息を吹きかけながら囁いた。
「辛いなら、もう1回イけよ。イッていいぜ……ペニスもしごいて抜いてやろうか?
それともこのまま、こっちから直接……」
くりっと前立腺を指先で揉んだ。
「んっ……あっ……ぁぁ……」


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