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「啓介、もう出て来い。」 あぁ、やっぱり逃げられない、と思った。 涼介の良く響く低い声は、呪文のようだった。 逆らう事はおろか、その言葉に従うことがどういう事なのか考える事もできない。 啓介は、濃い闇の中、太く真っ直ぐ伸びた杉の木の陰から姿を表した。 半裸の状態で、首を涼介に押さえつけられた格好の拓海は、啓介の姿をまるで亡霊を見ているかのような眼で見ていた。 そしてすぐ、羞恥に顔を紅く染め、花弁のように開いていた両足を閉じて己の欲望を少しでも隠そうとした。しかし、涼介の手がするりと伸びて来て閉じようとした腿の間の隙間に差し込まれる。そして内腿の間をするりとすべり降りていった。 「……う…」 内腿を撫でられる感触に、拓海は啓介から顔を背けながらもぴくりと身じろぎした。間近にまで歩み寄ってきた啓介の眼にも、拓海のペニスが体と同じようにぴく、と蠢くのが見えた。 啓介の瞳に映った拓海の体は、それはそれは綺麗だった。 Tシャツは胸の上あたりまでめくり上げられ、男達に愛撫されたのであろう胸の飾りは赤く充血してツンと尖っていた。服の下には意外と華奢な体があって、うっすらと肋骨の凹凸が見える。そして、その下には、くぼんだ小さな臍があった。肌の色は月の光のせいか、拓海の汗のせいかミルクのようにコクのある深い白で、滑らかに光っている。 触りたい――啓介は半ば本能的にそう感じていた。 へその下には浮き出た腰骨があって、ウエストから腰骨にかけては男を思わせる骨太さがあったが、不思議と男を強く感じさせることは無かった。むしろ、拓海が体を微かに動かすたびに動く臍の上の縦の線が、やたらと艶めかしかった。 さらにその下には、そこだけ皮膚の色を異にする、立ち上がったペニスがあった。薄いアンダーヘアを纏って、きゅんと腹につきそうなほどに反り返り震えている。色素がそれほど強く沈着しておらず初々しい色を呈していて、啓介のものより一回り小ぶりだが立派に男という性を主張していた。 そう、今、啓介の目の前で昂ぶりを隠しもせず晒しているのは間違えようもなく男なのだ。自分と同じ性器を持つ男。しかし、どうしてこんなに欲情してしまうのだろう。涼介の恋人である、拓海に。 啓介は思考の止まりそうな頭でぼんやりと考えていた。常識では考えられない光景と自分の感情に、脳がフリーズしてしまいそうだった。 啓介の思考なんてお構いなしに目の前に映像は続いていた。 涼介は触れるか触れないかの薄いタッチで拓海の肌を撫でる。拓海の濡れたペニスは涼介の手が太腿の内側を行き来するたびにぴくんと跳ね上がって反応していた。 「どうした…?さっきよりもずいぶん敏感になっているんだな……?啓介が見ているせいかな……?」 拓海?と拓海の耳朶に口を寄せて涼介は囁いていた。 「や…ちが…」と拓海が言いかけたとき、涼介の手はとうとう拓海のペニスへとたどりついた。やんわりと、焦らすように握ると、拓海は小さく歓喜の声を上げた。 啓介は無意識に手を伸ばしていた。 延ばした先にあった、拓海の膝を撫でる。すると、拓海の足は奥へと誘うようにゆっくりと開いた。月下美人が月の光を浴びたように花開く。 拓海は喘ぎながら涼介の首に両手を絡ませるようにして抱きついていて、啓介の方なんか見ても居なかった。 開いた足の間では、涼介の手がペニスを握り、やわやわと動いていた。 それに合わせて拓海の腰ももどかしそうに揺れる。 啓介の手は意識とは関係なく動いていた。触れてみたいと思うままに。 啓介の手は拓海の立ち上がったペニスの下、張り詰めた双珠にそっと触れた。 きつく張り詰めた皮膚の下にある可愛らしい2つの精巣を弄ぶように転がす。 もっとして欲しいとでも言うように、さらに拓海はしどけなく股を開いた。 拓海は涼介の頭を引き寄せ、深く口付けていた。 涼介の唾液を飲み込み度に拓海の喉がこくりと音を立てていた。 「………や、ぁ!」 啓介の指が、拓海の双珠の真ん中をなぞりながらつつ…と下のほうへ降りていくと、拓海は声を上げて小さく仰け反った。 涼介が握っていたペニスが一回り大きく膨らむ。 「お前は……本当にいやらしいんだな…?そんなに、してもらいたいなら啓介に抱いてもらえよ。」 涼介は啓介をちらと見やった。 呪文のような涼介の甘い声が、啓介の思考を完全に停めた。 「え……?あ…」 拓海はすでに溺れた魚のように半開きの目で宙を見ている。 淀んだ目は何の光も映していないように見えたが、その奥にひどく淫らで鮮やかな炎が見えたような気がした。 自分の目も、あんなふうに淀んでいるのだろうか? 啓介は涼介の呪文にかかったように自分の手を更に下降させ、拓海がさっきまで知らない男をくわえ込んでいた入口をなぞった。 「……うぁ!」 入口はひくりと収縮した後、ゆるりと開いて啓介の指を難なく飲み込んだ。 すでに十分に解され、ローションが塗りつけられているそこは喜んで啓介の指を受け入れる。 涼介のシャツを掴んだまま拓海は仰け反って腰を揺する。 そして、もっとと強請るように熱っぽい眼で啓介を見上げていた。 その眼が、啓介の僅かに残っていた理性を粉々に砕いてしまった。もう、止めることはできなかった。 差し込んだ指を3本にまで増やし、ぐちゅぐちゅ音を立てて拓海の中をかき回す。 拓海は涼介のシャツを手放して、口の端から垂涎しながら身を捩って悦んだ。 そして、啓介は指の抽挿を繰り返しながらそのまま覆いかぶさり、片手でジーンズのベルトを外してジッパーを下げ、その中から猛り狂ったように硬くなっていたペニスを取り出した。今まで何度も女達を喜ばせてきたペニスだ。しかし、いまこの瞬間は拓海の体にこれを沈めてみたいと思う。いや、沈めなければならないと啓介は思った。これは欲望に歪められた本能なのだろうか? 「……あ……あ……」 拓海の艶っぽい嬌声を聞きながら、角度がつきすぎた自分のペニスの根元を握り、先端で拓海の入口の近くをなぞった。 拓海が仰け反る。白い喉がいやに目に付く。 そこに歯を立ててかじりついたら真っ赤な血が飛び散るんだろうな。 そんなことをぼんやりと考えながら、啓介は拓海の秘所からゆっくりと指を抜き、完全に抜ける直前、入口を自分のペニスの太さに合わせるように広げたままペニスをぐいと押し込んだ。 拓海は息をつめて、見開いた眼で虚空を見ていた。 「あ」の形にひらいた唇が血液の色のように紅い。 ゆっくりと奥まで誘い込まれた啓介のペニスは、妖しく蠢く無数の襞に絡まれて今までに感じた事のない強い快楽を感じていた。 啓介は背筋を強張らせ、「うう……」と呻いたほかには声は出なかった。ともすればこのまま達してしまいそうなほどの強烈な刺激を、唇を噛み締めて堪えるほかになかった。 「…ほら、拓海?そんなに締め上げちゃダメだ…。啓介が苦しそうだぞ?」 涼介がいうと、その声に従うように締め付ける力が少し緩くなった。 啓介は緩んだそこを自分のペニスを使って、腰を振って、組み敷いた拓海の中をかき回した。そうしたいという衝動が啓介を突き動かしていた。 じゅぷじゅ…とその音が大きくなるにつれて、拓海の腕は啓介の腕を昇ってきて、しまいには背中に絡み付いてきた。 啓介が腰を揺するたび、拓海の背骨がベンチにこすれてごりっと音がした。 古くなった木のベンチは、啓介と同じリズムでぎしぎし軋んで音を立てた。 そして啓介の下腹部に自分のペニスをこすりつけるように拓海は仰け反って、嬌声を上げて、汗でしめった肌を涼介の前で晒した。 涼介の指が反り返った拓海の胸の紅い飾りをぎゅうと摘み上げるようにひっぱる。 「……うあ…ぁ……!」 拓海は前髪を跳ね上げ、腰を捩って、ペニスからまた1雫ぽつりと垂らす。 その声と仕草に、啓介の背筋をゾクゾクとした寒気が駆け上がる。 「拓海が欲しいのは、俺なんだろう?啓介じゃなくて…」 そう言う涼介の顔を、拓海は眼に涙を一杯溜めて見上げて、頷く。 その唇に涼介が優しくキスを落とすと、中にいる啓介をぎゅっと強い力で締め上げた。 「じゃぁ…俺以外の手や体では、イクなよ…?」 あふあふと魚のように喘ぎながら、それでも拓海は頷いた。 啓介は急に悔しくなった。 俺ではイかない、……だと?俺はただのおもちゃなのか? 今まで散々女たちを悦ばせてきた啓介には多少なりとも自信があった。その自尊心をずたずたにされた気分だ。 啓介はチッと舌打ちすると、突き上げるように激しく拓海を揺すり始めた。 今までとは比べ物にならないくらいの深さと激しさで、拓海を貫き、かき回す。 「………あああっ!」 拓海は体をねじって激しい責め苦から逃れるように涼介を見上げたが、涼介はやだ穏やかに微笑みながら拓海の腕や肩をなでさするばかりだった。 啓介はしなる拓海の背骨を両腕で抱き抱えるように持ち上げ、下から突き上げながら胸の飾りの片方を口に含んだ。唾液をたっぷりと含ませた舌で転がすように愛撫してやると、抱き合った2人の下腹部に挟まれた拓海のペニスがどくどくと脈打っているのが伝わってきた。 そこを手で扱いてやれば拓海を射精させることは容易かったが、啓介にもプライドがある。男を抱いた事が無かったので、果たして中からの刺激だけで達する事ができるものかどうかはわからなかったが、どうせイかせるなら手ではなくペニスでイかせてやりたかった。 どうしようもなく乱れて、意に反するように拓海のペニスが精液を吐き出す瞬間を見てみたかった。兄よりも自分の方が良いのだと、拓海の体に言わせて見たかった。 「……ううぅ…や、あ…」 がたがたと締め付けがゆるんだ木のベンチを鳴らして、啓介は打ち付けるように激しくペニスを抜き差しした。胸の飾りを舌でこりこりと転がし、時にきつく吸い上げて、また仰け反る喉や湿った耳朶に舌を這わせて拓海を絶頂へと誘う。 拓海は焦点もおぼつかない眼からぼろぼろ涙を零し、喘ぐ唇の端からはだらしなくヨダレを零して、そのペニスはもうはちきれんばかりに怒張していた。 しかし、喘ぐ表情は切ないほど苦しそうで、零れる涙はまるで悲しくて泣いているようで、啓介はだんだん胸が痛んできた。 そして、焦点の合っていない目で啓介の首に手を回し、無理な体勢で抱きついて耳元で叫んだ。 「りょう、すけ……さ…ん」 消え入りそうな小さな小さな声だったのに、その声色はまるで悲しくて叫んでいるかのような色だった。 |