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拓海は眼を見開いて、胸を膨らませて大きく息を吸った。 睫毛の際から、透明な涙の雫がぽとりと落ちた。 その刹那―― 「……っやああぁっ!!!!」 ベンチに貼り付けにされたような格好のまま涼介が焦らすようにゆっくりと数回ピストンすると、拓海はあっけなく自分の腹に白い体液をぶちまけた。 繋がった部分からは溢れた啓介の精液を垂らし、自分のペニスからは自分の精液を垂らす。体を折って深く楔を打ち込まれていた拓海は、胸元まで自分の放ったのものを撒き散らした。 腹や胸が激しい呼吸の為に大きく波打っていた。その表面にぬめる体液を光らせたまま、拓海はまだ両手を拘束されていた。眼は虚ろで、口はだらしなく開いたままで、いつまでも射精の脈動の名残なのか、あまり色素の濃くないペニスの先端からぽつり、ぽつりと白い雫を垂らしていた。 己の意思とは関係なく、求めたものがもたらされて、満たされて、拓海は果てた。 ずっと待っていたのだ。果てしなく続く責め苦のような愛撫に耐えながら。 涼介が覆いかぶさるのを。涼介のペニスに貫かれるのを。啓介ではなく、涼介を。 「すごいな……今日はそんなに良かったのか…?啓介のおかげかな…」 涼介は精を放ったばかりでまだぐったりしている拓海をお構いなしに貫いて揺らしていた。結合した部分からは、じゅぷ……と液体と空気が混ざるような卑猥な音がしている。 啓介がすぐそばで見ていることなんか全く意に介さないように、ただ淫らな笑みを浮かべて腰を揺すっていた。 ほんの一部分を除いて全く乱れのない涼介のシャツやコットンのパンツから、しゃりしゃりと衣擦れの音が聞こえる。 「こんなに一杯出して……」 「……うぅ…あぁ…」 涼介は拓海が放った体液を薄桃色の拓海の胸の飾りに、指先で撫で付けた。こすり付けるように指先で撫で回し、爪を立ててツンと尖った先端をへこませるように引っ掻く。 そして、ぬるぬるとぬめるその先端を、執拗に摘んで引っ張るたびに、拓海は頬を真っ赤に染めて涙を零しながら涼介の名前を呼んだ。 傍らで見ている啓介も、再び欲情してしまいそうな切なくて、淫らな声。 「……あ……ぁ…りょ…すけ…さ……」 涼介はまた、拓海の腹の上の白濁をなでる様に手で掬い取ると、それを絡めて拓海のペニスを握った。 再び、以前の姿を取り戻す拓海のペニス。 むくむくと大きくなり、すぐにもとの硬さと大きさを取り戻した。 にゅるにゅと涼介の大きな手が上下にしごくと、拓海はまた身を捩って悦んだ。 「啓介が見ていると思うと……興奮する…?」 信じられない事に拓海はこくりと頷いた。 「また、啓介に抱いてもらいたい?」 拓海はしばしためらった後、またこくりと小さく頷いた。 焦点の合っていない瞳が、ひどく淫らだ。 「……まったく、欲張りだな…」 そう言うや否や涼は、拓海が壊れんばかりに突き上げて揺さぶった。 拓海は滅茶苦茶に揺さぶられながらも、腰を持ち上げていっそう深く交わりたいと訴える。涼介もそれに答えるように、腰を打ち付けるように深くペニスを突き刺した。 じゅぷじゅぷと粘着質な交わりの音が激しくなる。結合した皮膚の隙間から、拓海の狭い入り口を行き来する涼介の濡れた赤黒い茎がちらちらと垣間見えた。 自分の血を分けた兄の体の一部が、他の人間の体内に出入りする。目を背けたくなるのに、目が離せない。目を離した方がいいと頭では分かっているのに、まるで見せ付けられているような卑猥で淫らな情交の映像から、啓介は目をそらすことが出来なかった。 揺さぶられる拓海の細い体が、まるで人形のように思えた。 拓海を組み敷いて見下ろし、微笑んでいる涼介の横顔は、何かに憑かれたように恍惚としている。 涼介のこめかみや鼻筋を伝って、汗の雫が拓海の肌の上に落ちる。夜景の光と同じように透明な雫が後から後から拓海に降っていた。 東屋の眼前から一面に広がる自分の住む町の夜景を背景に、汗を迸らせて交わりあう涼介と拓海の姿。煌く光の粒の夜景のようにすぐ近くにありそうで、でも、手を伸ばせば届かない。 手を伸ばして初めて、届かないと分かる。絶対的な距離。 啓介にとって、目の前で深く情を交わす2人はそんな風に見えた。 ギシギシとベンチが激しく軋み、拓海のむき出しの背骨がごりごりと擦れる。涼介の膝も同じように濁った音を立てて擦れていた。 「…………うあぁっ!!!!」 啓介の鼓膜を、拓海のこらえた悲鳴が揺らした。 そして拓海は、さっき放ったばかりだというのにすぐに2度目の絶頂に達して、事切れるように意識を失った。せわしない呼吸のために波打っている白い腹の上に、再び白濁が撒き散らされる。 支える力を失った頭部がゴト、と音を立ててベンチに落ちた。 くたりと力なく萎れたダリアの茎のような拓海の体を抱えてなおも腰を振りながら、涼介は自分のペニスを拓海の中に擦り付けた。 そして、呟いた。 「好きだよ……拓海…」 さっきまでの諌めるような口調とは打って変わった、切なく優しい声だった。 何度も同じ言葉を繰り返しながら、意識の無い唇や顎や首筋や耳朶に何度も優しいキスを降らせる。 「……お前が欲しがるなら……何でも与えるよ…… 快楽でも、苦痛でも、夢でも幻でも…… 俺の体でも、啓介の体でも……」 涼介は拓海の意識の無い体を大事そうに抱きかかえた。自分の服が拓海の放ったもので汚れるのもお構いなしに、長くしなやかな腕で包んだ。そして、拓海の体内の最奥に自分の証を残そうとするように、覆いかぶさった背中を震わせて涼介は射精した。 あんなに苦しそうで切なそうな涼介の横顔を目にしたのは初めてだった。 啓介は、思った。 兄は狂ってしまったのかもしれない。 ずっと型にはめられて育ち、窮屈な思いを我慢して、欲しい物を欲しいとも言えずに、抑圧されたまま育って、そして、拓海に出会った。拓海に出会って、恋に落ちて、拓海を愛して、拓海を愛そうとして。そして、愛しすぎて、繋ぎとめておきたくて、欲しがる物を与えたのではないだろうか。 拓海に欲しがるものを与えた後で、自分を与える。そして、拓海が本当に欲しがっているのは自分だと実感したかったのかもしれない。拓海に、本当に欲しいのは自分なのだと認めさせたかったのかもしれない。 そして、涼介を愛した拓海もまた、それらを全部受け入れたんだ。 それが拓海の愛の形。 金で雇った見知らぬ男に抱かれることも、映像に納められることも、愛する男の血を分けた弟に抱かれることも。 自分の入る余地なんてこれっぽっちもないじゃんか、と啓介は思った。 虚空の彼方には満つる月。 遠くに煌く冷たい夜景の光の粒のはるか上空で、白々しい光を投げかけながら月が見ていた。 満ち足りた表情で意識を失っている拓海と、 苦しそうな顔で拓海を求めて止まない涼介と、 何かに魅入られたように立ち尽くす啓介を。 啓介は、それから何度も夜を重ね、誘われるままに何度も拓海を抱いた。 何度も何度も何度も何度も……いくら抱いても飽きることは無かった。 それどころか、拓海を抱いてから数日経つと拓海の事を考える時間が多くなり、更に数日経つとまたあの肌に触れたいと思い、夜眠って朝目覚めるたびに、その思いは強くなる。1週間もすると拓海を抱きたくて、拓海に抱かれたくて、体が火照って疼いてしょうがなかった。 他の女、無論男でも、その代わりにはなれなかった。いつも啓介の思考を独占して、自分の体の一部を欲しがる拓海の、誰も代わりにはなり得なかった。 そして、啓介が拓海を抱くときには必ず涼介が側にいた。 拓海は啓介に抱かれながら、涼介を求めた。 涼介も啓介に抱かれた後の拓海を、貪るように欲しがった。 啓介は、自分は拓海と涼介の情交における、ただの愛撫や前戯に過ぎないのかもしれないと思った。涼介が自分の手や舌や言葉を使うかわりの道具のなのかもしれない。 啓介に抱かれた後、全身を火照らせて熱に浮かされたような拓海に覆いかぶさる涼介の横顔は、切なそうに眉根を寄せた苦しそうな顔だった。 あんなに、あからさまに何かを欲しがる涼介の顔を、啓介は生まれてこのかた見たことが無かった。 拓海に「欲しい」と言わせる為に啓介に拓海を抱かせて、拓海がもうどうしようもなく欲しがってからでないと自分を与えない。 そして、涼介は自分を与えながらも何度も拓海に「欲しい」と言わせ、自分が求められているのだと実感できるまで、拓海は達することを許されない。 拓海は、何度も涼介の下に組み敷かれたまま意識を失っていた。 幸せそうに淫らな顔で。 涼介は行為の最中、何度も拓海の名前を呼ぶ。拓海に意識があっても無くても。自分の物だと確認するように。自分が欲しがっているのはお前だけだと言い聞かせるように。 涼介は拓海に逃れられないほどの甘い悦楽を与えて、拓海を自分の物にしようともがき苦しんでいた。拓海もまたもがき、狂おしいほど涼介を求め、啓介をも求めた。 そして、喘ぎながら求める淫らで綺麗な拓海の横顔に、啓介もまた引きずりこまれていった。 快楽に耽る拓海はまるで美しい蜘蛛のようだった。 禍々しいほどに美しく、危ないと分かっていても近くで見たくなる。 触れてみたくなる。 そして、白い体をさらして身悶える拓海から立ち上る色香はまるで蜘蛛の糸。 触れたが最後、銀色の糸が張り巡らされた蜘蛛の巣にからめとられてしまう。もがけばもがくほど体に巻きついて離れれらなくなる銀の糸。 涼介はすすんで身を投げた。拓海を愛し、愛されたくて、切ない想いを抱えてその巣に堕ちた。ただ、もがきながら堕ちていくだけ。 逢瀬の度に啓介は拓海の体を貫き、涼介は拓海の体に愛撫を与え続け、拓海はそれらを享受し、己が意識の途切れるまで溺れ続けた。 いびつでゆがんだ愛の形。 それでも、その色は透明で鮮やかに煌いて、啓介の眼を惹きつけて止まなかった。 涼介だけでなく啓介もまた、いつしか銀色の糸に絡め取られていた。 拓海は笑う。晴れやかに艶やかに。 惜しげもなく細く白い腰をうねらせて、喉を晒して、彼らを誘う。 僕を愛して欲しいと、潤んだ瞳で訴える。 あんなに涼介に求められていることを知らないのだろうか? それとも、もっと求めて欲しいのだろうか? 今宵もまた、拓海はシーツの海に沈められる。涼介と啓介の4本の長く、しなやかな腕で。 真っ白い海原で漂う拓海の体を、涼介と啓介の大きな掌が水面を撫でるように這い、拓海の熟したざくろの実のように濡れた赤い唇を、涼介と啓介の唇が幾度も塞ぎ、唾液を注ぎ込む。 緩やかに弧を描いて反り返る拓海の背中を、涼介も啓介もまるで花束を抱えるように愛おしそうに腕を回して抱え、拓海の平らな胸に頬を寄せるようにしながら、拓海を揺らした。 拓海は仰け反った頭を真っ白いシーツにこすり付けるように乱し、うわごとの様に掠れた声で2人を呼んだ。求められる声に呼応するように、涼介も啓介も拓海の体を押さえつけるように2つに折り、深く楔を打ち込む。 もっと深く打ち込んで欲しいと、あなた達に繋ぎとめて欲しいと、拓海は喘ぎながら泣きながら訴えた。 啓介は組み敷いた拓海に問いかけた。 「……拓海?……お前はこれで幸せなのか……?」 拓海は乱れた前髪の奥の眼を細めて、うっとりと艶やかな笑みを浮かべ、そして無邪気にこくりと頷いた。喘ぐような呼吸の為に閉じることの無い唇の間から、唾液にまみれた赤い舌が見えた。 もうさっきからずっと啼かされっぱなしで、声なんてとうに嗄れてしまった拓海は何も言わずに頷くだけだった。 啓介は知っていた。拓海は決して多くは語らないが、嘘も語らない。 その答えを聞いて、涼介もまた「まいったな……」とでも言いたげな、情けない顔で笑っていた。そして微笑みながら、また、拓海の白磁のような滑らかな肌に唇を寄せる。拓海が悦んでその細い身を捩る。 啓介の中で何かが吹っ切れたような気がした。幸せならいいんじゃねぇかと。 もうすでにこんな状況で、まともな思考回路なんてはたらきそうに無い。 啓介は考えることをやめた。 そして、快楽に身を落とした。 欲しがって、与えて。求めて、求められて。貪って貪られて。 欠けた部分を何かで埋めようとしてもがく。 果てしなく、輪廻のように終わることの無い夜。 その果てがどこにあるのか。そもそも果てなんて存在するのか。 拓海にも涼介にも、そして啓介にもそれは分からなかった。 いつも彼らを見ていたのは天空はるか彼方、夜の果てにいる何も言わない月。 ただそれだけだった。 The End 素敵なリクエストをお寄せくださった若茶さまに、この作品を捧げます。 ありがとうございました。
前からGETしたかった あやさんとこのキリ番!
運良くGETで来て、変態シチュエーションを何点かリクエストさせて頂きました^^;
そんなリクエストをしておいて何ですが、
連載中は私の変態リクのせいで あやさんがイヤな思いをされてないか、
読者さんの反応を たぶん あやさんと同じ位、
もしかしてそれ以上に気になってたりもしました。
けれど、そんな危惧もなんのその!
私の取り越し苦労だったようで「夜の果て」は流石のエロ萌え小説として完成されました。
作品を頂いてから当サイトでの公開が遅くなってしまったのは 私がへタレていたせいでして;; 挿絵と同時に公開させて頂こうと思っておりましたら、 こんなに日が開いてしまいました;; あやさん、大変遅くなってしまって済みません! 素敵な作品をどうも有難う御座いましたvv そんな あやさんのサイトはコチラ → Silver Drops |