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タイルから突き出しているコックをひねると、熱いお湯が勢い良く噴出してきた。 と同時に、もうもうと白い湯気が立ち上ってあっという間に浴室内に充満する。 啓介は、少し熱すぎる位の温度のシャワーを頭から浴びていた。 整髪料でツンツンと立たせていた金色の髪が、水気を含んでおとなしく垂れ下がってくる。 その金色の頭を、乱暴に両手でごしごしと掻きむしった。 シャワーの水滴は筋になって啓介の肌を滑り落ち、今夜のバトルの名残の熱や峠の風が舞い上げた埃を洗い流してゆく。 しかし、いくら熱いシャワーを頭から浴びても洗い流せないものもあった。 それを洗い流したくて、疲れた体を無理やり浴室まで引っ張ってきたのだが… 啓介は流れるお湯はそのままに、足元を見るようにうつむいた。 その目に飛び込んでくる自分の体の一部は、熱を持ってズキズキと疼いている。 啓介の下腹部で、硬く大きくなったペニスが鈴口を主に向けていた。 絶え間無く降ってくるシャワーの水滴のせいで濡れそぼって、主張していた。 お前は『あれ』に欲情したのだと。 それを無視するように、啓介はボディソープを手に取った。 白い陶器のボトルを2、3回押すと、シトラスの香りのする透明なジェルが、お湯で濡れた掌にとろりと出てくる。 兄の涼介が好んで使うボディソープだ。脱衣所にいつも買い置きが置いてある。 啓介はタオルは使わずに、それを適当に泡立てて体を洗って行った。 腕、肩、首…そして大雑把に胸や腹、手が届く範囲で背中やわき腹を撫でていく。 適当にあわ立てたきめの粗い泡が、啓介の野性味を帯びた体を覆っていった。 アイツも…このボディソープで体を洗ったりしたんだろうか…? そして、アニキのベッドの中では…2人とも同じ香りの肌を触れ合わせていたのだろうか…? あんな風に…? 啓介は半ば無意識に、泡だらけの手で立ち上がっていた自分のペニスを握った。 硬く張り詰めているペニスとそれを包み込む自分の手が、泡でにゅるりと滑る。 ドクンドクンと力強く脈動しているそれを、上下にゆっくりと扱いた。 主の濡れた手によって包まれたそれは握る握力をはね返すように硬度を増して、はちきれそうに膨張していた。 泡だらけの手を上下に動かしてやると、薄い皮膚の下に蛇行した血管を浮かび上がらせて悦びに震える。 信じられない…… 一度快楽を与え始めると、止まらなくなってしまった。 もっともっとと、ペニスを擦る手の動きはエスカレートするばかりだ。 シャワーが激しく床を打つ音がするだけでそれ以外の音はかき消されたはずなのに、自分の荒い息が耳の奥に響くように聞こえる。 啓介は、水蒸気が飽和したせいで一面しっとりと濡れたアイボリーの浴室のタイルに片手を付いた。 そして、もう片方の手で自分を煽る。 下腹部はみるみる泡だらけになって、増幅した泡は誘うように啓介の快楽をも増幅する。 しかし、いつもよりも数倍、昂ぶってゆく速度が速い。 溜まっているからとか、ボディソープを使ってるせいだけではないような気がして、啓介は目を閉じた。 閉じた睫毛に、前髪を伝って落ちてきた雫が当たる。 こめかみや頬をお湯が筋になって流れて行くのが分かる。 そして、自分のペニスがいつもより硬く、強く脈打っているのもはっきりと分かった。 片手を壁についたまま、もう片手で抑えようも無くペニスを扱いた。 泡でぬるぬると滑って、その間接的な感触が自分の手ではなく、誰か他人の手で扱かれているようにも思えてきた。 開放が近くなって、扱く手の早さも、両足に入る力も自然と高まる。 力が入ったせいで臀部や腿の筋肉が盛り上がり、薄い皮膚越しにできた隆起を暖かい雫が撫でるように流れ落ちていった。 啓介は頭からシャワーを浴びながら、片手で自分のペニスを扱きながら、苦しむように喘いで息をしていた。 閉じた瞼に、さっき見た映像が浮かび上がる。 整わない息で激しく上下に揺れる上気した白い平らな胸。 両足をしどけなく開いたまま、その中央に未だ開放してもらえないペニスをひくつかせながら、カメラに向かって誘う顔。 啓介のペニスは急激に開放へ向かって昂ぶりはじめた。 びくりと脈動して、さらに一回り大きくなる。 啓介は勝手知ったるという風に、括れや張り詰めた亀頭を親指と人差し指で作った輪で擦るように、ペニスを扱いた。 「……うっ……っく」 意識がぼんやりと霞む。抑えていた息が思わず声になる。 それくらい気持ちがいい。自分はどうにかなってしまったのではないかとさえ思った。 啓介の頭の上数十センチの所から、小さな穴を通って適度な圧力で暖かいお湯が噴出している。 そのリズムは乱れることなく一定の速さで、啓介の髪の毛や肩を叩き、 背中や胸を伝って啓介の足元のブルーのタイルの上を舐めるように流れていく。 啓介に当たって砕けた水滴は、さらに小さな飛沫になって、浴室内に飽和していった。 啓介の体に当たらなかったシャワーの小さな水滴が細かいリズムで床のタイルを叩く。 壁についた啓介の左腕や、微かに動く右手、それと同じリズムで揺れる前髪や鼻から落ちる雫は、 直接床に落ちる水滴よりも大きく、床を打つ音も大きくてそのリズムもやや遅い。 「……あ………うっ…」 それらの一定の音を乱すように、ペニスを擦る啓介の右手が立てるちゅくちゅ…という卑猥な音と 食いしばった歯の間から漏れる啓介の苦しげな吐息が、体に纏わりつくような湿気を含んだ空気の中で不協和音のように響いた。 まもなく、絞り上げるような、突き上げるような強い脈動が訪れた。 精液を体外に吐き出すための脈動。 何度も経験しているはずなのに、今夜に限ってはびくびくと下肢が震えるほどそれは強かった。 「………っ!!」 啓介は水滴で濡れたタイルを握り締めるように爪を立て、水が筋を作って流れ落ちる背中を痙攣させる。 そして反り返ったペニスを握り、ぎゅぎゅっと大きく数回扱いて、 先端を下に向けて排水溝に向かって流れるお湯に混ぜるように、射精した。 ペニスの先端から噴出した白い体液が、パタパタとブルーのタイルに零れ落ちる。 しかし、それはあっという間に大量のお湯に流されて、跡形も無く消えてしまった。 「………っ…はぁ…」 啓介は、はぁはぁと肩を揺らして呼吸していた。 酸素を吸い込むために開いた口にも容赦なくシャワーのお湯が掛かり、唇を伝ってぽたぽたとお湯の雫がタイルの床に落ちた。 熱いシャワーの水滴が肩や背中を打つ感覚に、徐々に意識が引き戻されていく。 ずっと荒い息を吐いていたせいで干上がってしまった喉を潤すように、啓介はごくりとつばを飲み込んだ。 やがて、意識がはっきりしてきると自分で性器を握っているのが急に恥ずかしくなって、慌てて手を離し、もうすっかり洗い流されてしまった体を撫でさすってみたりした。 あんなので欲情するなんて… 精を吐き出したばかりのペニスはまだ芯だけが硬く、敏感になっている亀頭はジンジンと脈打つように熱かった。 啓介はシャンプーを適当にぶっ掛けて手早く洗った金色の髪をぶるぶると振った。 さっきまでのわけの分からない、だが確実に啓介を昂ぶらせた妄想を振り払うように、髪の先から水滴を飛ばした。 浴室の湯気で曇った鏡を、さっきまでペニスを握っていた手できゅっと拭くと、そこには乱れた金色の髪とまだ微かに上気した頬に残る情欲の跡が映っていた。 「あっつ……」 熱いシャワーを長い時間頭から浴びていたおかげで、啓介はすっかりのぼせてしまった。 ガチャリとすりガラスのドアを開けて、足を脱衣所に踏み出すとお湯を滴らせた啓介の体とともに、浴室内に充満していた湯気がモワッっとはみ出してきた。 バスマットの上に、ぼたぼたと音を立てて雫が落ちる。 だらだらとまだ雫が垂れている体をろくに拭きもせずに、濡れた髪の毛を近くに置いてあった白いバスタオルでごしごしと乱暴に拭いた。 そして、濡れた犬がそうするようにぶるぶると頭を振って、手ぐしで金色の髪をかき上げる。 頭を拭いたタオルを腰にきゅっと巻きつけて、啓介はバスルームを後にしようとした。 通り過ぎようとして、何気なく脱衣所の鏡に眼をやった。 そこに映っていたのは、腰から下を白いタオルで覆っただけの裸の自分。 父親も母親も身長が高いせいで、兄とほとんど変わらないくらいまで伸びた身長。 身長に釣り合う程の腕と足やほんの少しだけ筋肉がついた胸は自分で見てもバランスが良いと思う。 腕や肩は骨の上に薄く筋肉が付き、もう十分に成長しきって、どこからどう見ても立派な大人の男だった。 啓介は自分の平らな胸に手を当てて、心の中で呟いた。 アイツだってそうだ… 拓海も啓介と同じ成長期を過ぎた大人の男。 少なくともさっきのビデオを見るまではそう思っていた。 映像の中の拓海は…大人の男でもなく、ましてや女でもなかった。 股間には、ついさっきまでの啓介と同じく開放を強請る男の性器があった。 にもかかわらず、華奢でまだあどけない少年のように完成しきっていない体。 胸元まで上気させて、白い肌を見せびらかすように仰け反る体からは、まるで女のような色気が放たれていた。 たおやかにその身を捩って、潤んだ眼を細めて、細い腕を伸ばして誘うように求める様は、今まで抱いたどの女よりも啓介を興奮させたのは事実だった。 啓介はバスルームの扉を後ろ手で閉めると、蛍光灯だけが付いたキッチンへと足を向けた。 まだ、乾ききっていないむき出しの足でぺたぺたと歩く。 冷蔵庫を開けてキンキンに冷えた缶ビールを1本取り出し、キッチンの明かりを消して2階の自室へと向かった。 火照った肌に、夜明け前のしんとした空気が直に触れて心地よい。 自分の部屋にたどり着いた啓介は、下半身を覆っていたバスタオルを剥ぎ取ると、新しい下着とTシャツを身に着けた。 このまま、ベッドに入れば吸い込まれるように眠りにつけたであろうに、啓介はそうはしなかった。 缶ビールを開けて、ぐびと喉を鳴らして一口飲んだ。 喉を流れて胃へと落ちていく冷たい感触が生々しく感じられる。 啓介はベッドに腰掛けて、テレビのリモコンを手に取った。 そして、しばし戸惑うようにそれを弄んでいた。 やがて、決心したようにそのスイッチを押す。 ヴン…と音を立ててテレビに明かりがともった。 啓介はまた、ごくごくと缶ビールを煽った。 口の端から零れてしまった黄金色の雫を、ぐいと手の甲で拭うと、ビデオの再生のスイッチを押す。 ビールで湿った唇を、餌を目の前にした肉食獣のようにべろりと舌なめずりした。 テレビの画面には一面に砂嵐が映ってる。そして、ふいに映像に切り替わる。 見てはいけないもの――題名も差出人も、目的も不明のビデオテープ。 啓介は見ないほうがいいと分かりつつ、そのビデオテープを再生した。 夜の気配は薄まりつつある。夜はもうすぐ明けようとしていた。 |